2020年9月20日(日)、「HUMAN POWERED 翻訳勉強会 2020 SEPTEMBER」へ参加しました。
セミナーのセッションは下記の2部構成で、Kaori Myattさんの進行により進められました。
①「英日翻訳の技術」(鍋島弘治朗さん)
②「技術翻訳のポッカリ落とし穴」(松田浩一さん)
①「英日翻訳の技術」
まずは、関西大学教授の鍋島さんのセッション。
『英日翻訳の技術』(鍋島 弘治朗/ブルックス マイケル (著)、くろしお出版)の中から、
1. 代名詞、2. 数量詞、3. 無生物主語、4. 名詞句、5. 順行訳、6. 話法、7. レトリック(+イディオム)、8. 否定
を取り上げる形で進められました。
セッションでは例文が取り上げられ、指名される形で各自が訳出しました。
(「難しいものが回ってきませんように…」と、内心ヒヤヒヤしていました)
セッションで触れられた内容のうち一部を抜粋させていただきます。
1. 代名詞
翻訳校閲の仕事の中で、常日頃思うのが、「代名詞を逐一訳してくる方の多い」ことです。「これ」、「これら」ならまだマシですが、「彼」、「彼ら」ともってこられると、「う~ん…」となってしまいます。
決して間違ってはいないのですが、
① 対象が不明瞭になる
② 冗長になる
② 学校英語のような初学者感が増す
ように思います(決して学校英語を馬鹿にしているわけではございません)。
鍋島さんは、代名詞を隠すテクニックに触れられていましたが、心底同意できるものでした。
4. 名詞句
これも常日頃思っていることを、鍋島さんが説明されていました。
著書の中で記載されているため詳しくは書けませんが、カギは自動詞と他動詞、そして品詞の転換にあるように思います。
例えば、セミナーの中で仰っていた「名詞に動詞を見出す」という旨は非常に印象的でした。
以下、私が作成した例文をもとにすると、
The introduction of the new CAT tool enabled us to translate these contents quickly.
字面どおり「~の導入が…させた」などと訳しても間違いではないですが、英語原文が透けて見え、まだ自然ではないように思います。
「~の導入により」、「~を導入したので」とするだけで因果関係が際立つだけでなく、背後にいる人間の意思、動作を醸し出すことができるように思いました。
この点、セミナーの中では夏目漱石による名詞句の解釈についても言及され、非常に興味深いものでした。
鍋島さんのセッション、そして『英日翻訳の技術』は、非常にわかりやすいものだと思います。堅苦しい翻訳論をこねるのではなく、極めてシンプルに、多くの方に理解できるように噛み砕いて説明されている印象です。
セッションを聴き、再度『英日翻訳の技術』を読み直して復習しようと思いました。