2022年06月26日(日)10:00~17:00、翻訳フォーラム主催の「翻訳フォーラムシンポジウム 2022」に参加しました。
以下、勉強になった点です。
①「翻訳のいろいろな『絵』」(高橋聡さん)
個人的な解釈も入りますが、「『絵』とはいわゆるdrawingだけでなく、図やNotesなども含まれる」という点でした。
これまで、「絵」と聞くと、いわゆる絵画やデッサンなどといった
いわゆる「drawing」を思い描いていました。
しかし、帽子屋さんこと高橋聡さんは、「ベン図や箇条書き、ロジックツリー」なども「絵」に含まれるとが仰っていました。
そう言われればそうだなという実感ですが、改めて意識すると、翻訳時に活用できる選択肢が広がりそうです。
例えば、ITや機械関係の説明について訳している場合には、実際のUIや機器以外にも、論理関係を明確にするために、ベン図やロジックツリーを描いてみる、思い描いてみるのも有用だと再度認識しました。
②「『絵』を描くための情報」(高橋さきのさん)
さきのさんのお話の中で一番印象的だったのは、「情報は累加的である」という点です。
これは、言い換えると、「情報は、提供された順に積み重なっていく」、「情報は『絵』に描き足される」ということになるそうです。
このためには、「訳文作成に使えるだけの情報量を持った『絵』」が必要となります。だからこそ、「訳文作成に必要なだけの情報『量』が必要」となり、正確にたくさんの量を取得するために、「読み取りには文法事項の活用」が必要となりそうです。
こちらも、うんうんと頷ける部分が多くありました。
③「寄って引いて絵を描く」(深井裕美子さん)
深井さんの発表の中で気になったのは、「プラスの情報かマイナスの情報化ということも大事」という点です。
情報をフラットに扱うよりも、コンテキスト上どのような位置づけにあるか(プラスの情報なのか、マイナスの情報なのか)を理解しながら情報を拾っていく点が重要だと理解しました。
次に、「絵が描けないものは読めていない。読めていないものは訳せない」旨を仰っていました。
こちらも、うん、うん、そうだなぁと理解できました。
「絵を描かないまま」、あるいは「絵を描けないまま」訳すと、いわゆるコンテキストを無視したブチブチ訳の一因になるのではないかと考えています。
④「絵は意外にずれるもの」(井口耕二さん)
Buckeyeさんこと、井口耕二さんの発表では、『さゆり』(アーサー・ゴールデン 著、小川高義 訳)を題材にした「オレンジ」色の意味するところの幅広さについて扱われました。
確かに、オレンジ色といっても赤色が強いものから黄色が強いものまで、さまざまだと思います。
私が感じたのは、「『絵』を描くうえで、その輪郭の正しさも大事ながら、色合いの正しさも重要」だという点です。
その意味では、コンテキストを十分にふまえた読解を行う必要がありそうです。
とはいえ、Buckeyeさんの仰っているとおり、「『絵』は意外にずれるもの」なので、その点もふまえ、可能な限り誤読、誤解を避ける措置を取っておく必要があると感じました。
⑤「ゲストコーナー」
お昼休憩をはさんで午後の部では、ゲストのみなさんが有益なお話をしてくださいました。
その中でも特に気になったのは、見坊行徳さんによる「物書堂辞書クイックガイド ~Macで、iPadで、Windowsで!?~」でした。
この中では、物書堂の辞書を各種プラットフォームで引く作業を実演を交えて説明してくださいました。こちらも新たな気づき、発見となりました。
物書堂がWindows環境で使えれば何の問題も生じないのですが、現時点において各種辞書環境を統一するのは難しそうです。
今回も盛りだくさんで学ぶことがたくさんありました。
主催のみなさま、ありがとうございました。