鍋島弘治朗さんの①「英日翻訳の技術」セッションに続いて行われたのが、
松田浩一さんによる②「技術翻訳のポッカリ落とし穴」というセッションです。
このセッションは、
①犯しやすい誤訳のパターン
②気をつけたい翻訳のポイント
③覚えておくと役立つテクニック
④機械翻訳と人間翻訳のいま
⑤自作辞書の勧め
をテーマに進められました。
日頃、技術分野の翻訳を担当することの多い私にとっては、非常に興味深いものでした。
まず、「日本語を見直す」ことをテーマに例題が出題されました。
「ん?」っと一瞬迷ってしまうような落とし穴のある訳文が挙げられ、「てにをは」をはじめ、自分の日本語を見直す契機となりました。
具体的な内容は書けませんが、表記が似ており一見同義に見えるような用語についても説明されていました。
これは、私が思いついたものですが、例えば「動作」と「作動」、「稼働」と「稼動」などはよく出てくるものだと思います。正しい意味を知り、きちんと使いわけなければならないと再認識しました。
そのためには、松田さんの仰るとおり、辞書を引くことを厭わない姿勢が必要です。この点、私の辞書環境はまだまだ拡張の余地があるため、少しずつですが構築していこうと思います。
資料の内容について詳しく触れることはできませんが、松田さんのお話を聴いていて私が感じたのは、「楽をするな」ということです。
これは松田さんが直接仰っていたことではありませんが、言葉の端々からこれまでの経験、苦労、それにより培った知識やスキルなどを感じ取ることができました。
TMやMT、TMSなど、翻訳に関する技術の進歩は著しく、翻訳会社に勤務する私も正直社内の最先端の技術にはついていけていないような状況です。
ですが、松田さんのお話を聴いていて、「大事なのは根っこ」だと感じました。
先端技術に頼るのも悪くはないですが、それを使いこなす人間の素養、スキルに問題があれば、見合う効果は得られないはずです。
セッションの中で「⑤自作辞書の勧め」という項目がありましたが、大事なのはこういうところだと思います。自分の手を使い、試行錯誤して作り上げる。その過程でコアとなる部分、そして枝葉となる部分が見えてくるということではないかと思います。
私も翻訳についてトレーニングを行うことがありますが、松田さんの仰っていることには心底同意します。翻訳に対するマインドだけでなく、簡潔明瞭にロジックを通す思考、訳文は何度読んでも「そうだよなぁ」と納得させられます。
当初、ビクビクしながらセッションに参加したものの、私の質問にも丁寧に答えていただき、終わってみるとまだ聴きたりないというのが正直なところです。
翻訳学校や他のセミナーでも指導されているようなので、そちらの参加も考えるようになりました。
以上が「HUMAN POWERED 翻訳勉強会 2020 SEPTEMBER」に参加した感想です。
貴重な機会を設けていただいたKaori Myattさん、鍋島弘治朗さん、松田浩一さんには心より感謝しております。
ありがとうございました。